大 古今亭祭り 渋好み 金原亭の会 1/17 前半

会場は日本橋公会堂。大古今亭祭りは14(月)〜18(金)まで開催され、どの日も楽しそうな顔付け。今松、雲助の名前に惹かれたし、休みも丁度都合がついたのでこの日を選択した。


ひしもち『寿限無


白酒さんのお弟子さん。細長くちょっとか弱そうに見えるがしっかりとした口調と、それぞれの登場人物にメリハリがあり好印象。

噺の筋をずらさず、白酒さんの弟子だなと思わせてくれる独自のくすぐりもあり、人それぞれ好みはあると思うが、チョイスしている言葉がおもしろく、この人のくすぐりがもっと噺に馴染んでくるとより会場を惹きつけられるようになると思う。

普通にこの噺を演じたら上手くこなせるのだろう。



馬石『安兵衛狐』


私の一番贔屓な噺家さんであったりする。何を聴かせてくれるのかと期待したが、寄席でも聴く期待の多いこの噺。

他の長屋の住人とはあまりソリが合わないが、互いは仲が良い源兵衞と安兵衛の二人が主な主人公。

源兵衞が酒を持って花見に行こうとしていたところ、長屋の他の連中が気をきかせて「花見でも行くのかい?」と尋ねるが、意地を張って「墓見に行く」と言ってしまったため、墓見に行くことにした源兵衞。

どうせなら女の墓の前で、と飲んでいて墓に話かけたりしていたらこれが意外と楽しいと思いだす源兵衞。安兵衛も今度誘おう。と楽しげな雰囲気を醸し出す技術はさすがは馬石さん。

塔婆が風で倒れたかと思うとそこには骨が覗いていた。骨にお酒をかけてあげ「ええ酒でござんしょ」「あなたさんもお酒がいける口ですね」なんて言いながらいい心持ちでうちに帰る源兵衞。

その夜、その女が幽霊の姿でお礼に訪ねてくる。ここのやりとりでの女の幽霊らしい少しか細い感じと、最初はびっくりするも、それにしても良い女だとテンションが上がる源兵衞がいつもよく表現できているなと思う。

その女を女房にして、夜に仲良くやっているところを安兵衛に発見される。ことの次第を安兵衛に説明すると、案の定安兵衛も墓見に行くと出かけていくが、手頃な骨が見つからい。そこで猟師に捕まってしまった女狐を助ける安兵衛。

猟師に何かと質問をする安兵衛と面倒臭そうな猟師のやりとりも馬石さんならではの空気感で見せ場だ。

そして助けた女狐がその夜に安兵衛を訪ねてきて、その女狐が安兵衛の女房になる。

安兵衛、源兵衞の二人に何故あんな綺麗な女房ができるのかと不思議に思う他の連中。

安兵衛の女房は目がキョトンとしていて、口がシュっとしているから狐なのではと安兵衛を訪ねる連中だが...

といった流れの噺。

馬石さんのフラにも合っていてニンな噺だと思う。

話が前後するが、マクラでの圓菊一門、志ん朝、金原亭とそれぞれ個性が違う一門が集まったのが古今亭でという話が楽しかった。



伯楽『猫の皿』


25分くらいの持ち時間であったと思うが、古今亭に関するマクラを時間の半分くらいたっぷりと。

私自身はこんな偉そうな落語の記録を書かせていただいているが、まだまだ新参の落語好きで、志ん生、10代目馬生、志ん朝といった名だたる名人の落語をライブで観たことがなく、そういった名人の元での経験したことを聞かせていただけるのは大変貴重であると思う。大古今亭祭りと名打つ理由がこういうところにも感じられた。

『猫の皿』は寄席でもよく観る機会があるので、この方の定番という認識。噺の筋としてはそこまで展開が多くはないので、道具屋がお茶をいただく仕草やそこに猫が見えるようにどう演じるかなど、大事な見所がいくつかある噺だと思う。

伯楽さんにかかると道具屋がお茶をいただく仕草、高麗の梅鉢茶碗を見つけた時の目利きの目が光ったように見える感じなど所作一つ一つに無駄がなく綺麗だと感じる。

安心して聴いていられるこの方のこの高座である。



さん喬『時そば


柳家からゲストで出演のさん喬さん。柳家一門会を開催する時には、同様にゲストを呼ぶこともあり、馬石さんなどが良く呼ばれ楽屋でいじめられているというマクラが可笑しかった。自分もいじめられないか心配だと。

後日の菊之丞さん(この会の発起人の一人)のツイッターにて、この会の楽屋も盛り上がっていたという旨のツイートがされていた。真相や如何に?


伯楽さんの高座が少し長引いたのかさらっと『時そば』を。

始まりの部分のさん喬さんの「蕎麦ぃっ〜」とシンと静まり返った冬の寒い夜というシーンがすぐに見える、マクラの振り方、噺への導入にはいつもぞくっとさせられる。

私自身は噺家ではないし、こういう言い方は良いのか分からないが、お手本となるような『時そば』だと思う。噺の筋を変えずに噺の良さを引き出す高座にいつもプロフェッショナルを感じる。


ここで仲入り。後半へ。