1/14 柳亭こみちの会 西新宿ミュージック・テイト

昨年の寄席での高座(虱茶屋、七度狐、うわさ小町)が凄く良い印象で昨年の内にこの方の会があれば行こうと思っていたのだが、折り合いがつかず年は越してしまったが、念願のこみちさんの独演会である。



こみち『女泥棒』


白鳥師がこみちさんのために作った新作とのこと。大師匠の小三治師の出番の前でこの演目を高座でかけて、、、というマクラが楽しかった。

噺のあらすじは泥棒になりたい大店の娘が女泥棒に弟子入りを懇願してひと騒動という流れ。自分の店からお金を盗んで貧乏な人に分け与えるのが目的。

娘が女泥棒に見守られながら泥棒に入るが、家主が在宅中の家に入ってしまう。が、おそらく見た目が可愛くおっちょこちょいな娘で、家主の好意で泥棒の成果を上げられる。

落語らしく綺麗なサゲもついて悪くはなかった。

恐らく舞台は江戸時代だと思うのだが、娘の口調が現代っぽ過ぎるのが気になった。

寄席で映える噺だと思うので、しばらく高座ではかけてないと仰っていたが、磨いていってもよいのかも。



こみち『徳ちゃん』☆


演題は知っていたが初めて聴く噺。

『徳ちゃん』自体はほとんど出てこない。

落語二人が女郎屋に遊びに行くが、いろいろと散々。

主役の落語家の連れ合いの方「徳ちゃん」は”はなれ”と呼ばれる部屋に通される始末。この”はなれ”の形容が中々可笑しい。

主役の落語家の方にはとんでもない花魁。こみちさんが『女泥棒』に入る前に予備の手ぬぐいを高座の後ろに置いていて、何使うのだろうと思っていたがここだったか。

両手に芋を持ってガシガシ食べながら(両手に手ぬぐいをぐいっと掴んで)、熊の様なと表現された花魁が登場。田舎訛りで、「ちゅっちゅっしてくんろ」とかやりたい放題。

女性の噺家でここまで表現してくれるか!と感服した。

『虱茶屋』の時にも感じたけど照れがなく笑わせどころを笑わせる度胸が凄いなと感じた。また観てみたい。



こみち『小間物屋政談』


この噺もライブで観られたのは初。結果この日は初めて三席とも初めて観る噺でありがたい機会であった。


背負い小間物屋の小四郎が女房のおときを残して、上方へ仕入れの旅に出た。

箱根の山にて用を足そうと雑木林へ入ると、男が襦袢一枚で木に縛られている。その男が若狭屋という大店の小間物屋の旦那。

盗賊に身ぐるみをはがされたというので、お金と自分の予備の着替えを貸して、自分の住所と名前を書いた書きつけも渡し、旦那は江戸へ小四郎は上方へと別れる。

しかし若狭屋の旦那は身体が弱ってしまっており亡くなってしまう。

書きつけから小四郎だと間違われてしまい、大家の源兵衛が死体を引き取りに行く。ここで源兵衞が仏様を見るのを怖がって、着ている服が小四郎の者だということでちゃんと確認もせずに火葬してしまう。

ここの源兵衞の描写が中々良かった。源兵衞のいい加減さが上手く伝わってきて後半へのよい流れになったと思う。


源兵衞がおときと、小間物屋を生業としている小四郎の従弟の三五郎の仲人となり二人は結婚する。

女泥棒の時にも感じたがこみちさんが演じる女性は声色に可愛さが上乗せされる印象で、この噺のおときに関して言えばもう気持ち、落ち着きのある声色でも良いのかなと思った。


当然生きている小四郎は帰ってくるわけで長屋は大騒ぎに。本気で何があったかわけがわからなくなっている小四郎の様子が可笑しい。

おときに小四郎と三五郎、どちらを亭主としたい。と源兵衞が尋ねる。おときが三五郎を選んだことで、源兵衞のちょっと大雑把な「お前はどっか行ってしまえ」と小四郎に対する一言、あしらいも楽しく観せていた。


小四郎は奉行所に訴え出る。

大岡越前守にも源兵衞から言われたようなことを言われ、落ち込んでいる小四郎。

その場には若狭屋の女房も呼ばれていて、若狭屋の女房と所帯を持たないかと大岡越前守に持ちかけられる。最初は乗り気ではなかった小四郎も若狭屋の女房の綺麗な容姿を見て、態度が一変。この時の小四郎のウキウキした様子も何とも可笑しかった。

小四郎の「大岡様へのご恩は一生背負いきれません」

に対して「背負い小間物屋ではない。もう背負うには及ばない」でサゲ。大岡越前守の人柄の表現もよく、奉行所の場面は流れよくサゲまで聴かせてくれた。

噺のリズム感もよくダレることなく観ることができた。それぞれの登場人物の表現も分かりやすい。高座で沢山かけることで、もうちょっと”渋さ”も感じるこの人の小間物屋政談になっていくのであろうと思う。


話が前後するが、女泥棒の前の紅白歌合戦に関するマクラがすごく面白かった。10分くらいたっぷり語っていたと思うがずっと聞いていられる話の巧さもさすがだと感じた。

また機会の合う独演会には是非足を運びたいし、寄席での15分の高座、そしてトリの高座も楽しみである。