黒門亭 1/2

2019年の落語始めは黒門亭の正月興行から。小満ん師匠の御慶、それに去年の後半から自分の中で評価がうなぎのぼりの駒治さんを目当てで。

さっそく演目と感想を。



あんこ『ゴジラかっぽれ』


あんこさんの師匠、林家しん平師匠が鈴本演芸場で披露していたという情報は知っていたが、観るのは今回が初。

ゴジラの着ぐるみでかっぽれを踊るという、特撮が好きなしん平師匠ならでは。

あんこさんの明るい人柄もあってなかなか気持ち良く楽しめた。ちなみに落語はなくゴジラかっぽれのみ。



喬の字『たらちね』


九月に真打ちに昇進のこの方。

科白が何箇所か飛んでいるし、噺の本筋にあまり繋がらないくすぐり、改変が何回か。正直に言うと真打ち昇進大丈夫なのか?と思ってしまった。

書き方が難しいが、『たらちね』という噺が、特に初めて『たらちね』を聴く人がもしいたとしたらどんな噺か伝わらないのではと思った。

顔立ちや声は良い。一度本寸法のこの噺を取り入れて、改良をするのであれば改良してほしいと思う。

ちなみに会場の笑いは多かった。人を惹きつける魅力はあると思うが私には引っかからなかった。イメージが変わる次の高座に期待したい。



馬楽『紙屑屋』


初めてのこと方。というのもホームページを拝見したら長期入院されていたらしく、最近復帰したのこと。

それもあってか一瞬科白を考えながらかなと思う間の部分もあったがトントンっとした語り口調で楽しい高座。

『紙屑屋』はようやく初めて聴けた噺で、紙屑屋という商いが昔はあったのかと思いながら聴いていた。

噺の入りは『湯屋番』と同じ。二階で居候している若旦那が奉公に行く噺で、若旦那が紙屑屋に出向く際の「紙屑屋より湯屋みたいな艶っぽいところで奉公したい」という科白が中々可笑しかった。

紙屑を選り分ける場面で「〜、湯島なる人参様に冬瓜かけ〜、」と野菜の名前が所々挟んである手紙を読むところなんか落語っぽくて好きだな。

忠臣蔵七段目の科白本なども出てきて、その度に仕事をせず本や手紙を読む若旦那の軽やかさが楽しい一席であった。


仲入り


駒治『10時打ち』


最近マイブームなこのお方。昨年末から連続してこの方の高座を拝見してとても楽しませていただいている。

10時打ちとは、予約取り辛い寝台列車などの乗車券が乗車日の一か月前の10時より販売されるため、販売日当日、みどりの窓口にてJRのマルスという機械にあらかじめ必要な情報を入力してもらい、10時ぴったりのタイミングで購入の操作をしてもらうことらしい。駒治さんのマクラより。

で、この噺は東京駅の10時打ちの達人である谷口さんが、10時打ちをどうしても成功させて名を上げたい上野駅の駅員に拉致されて、10時打ちを強要される。

谷口さんがいないと気付く東京駅のお客さん(半年前から乗車券を買うために並んでいた)、普段から上野駅に馬鹿にされていた西日暮里の駅員さんなども登場し、てんやわんやな内容なのだが、要所要所のくすぐりが面白く、何より駒治さんの熱量が凄いため観ているこっちも気分が高揚してくる。

登場人物の演じ分けがもっと丁寧ならとも思うが噺の楽しさと駒治さんの圧でかなり満足度の高い高座であった。

熱量のある起・承・転からのほんわかしたサゲが良い味を出していると思った。



小満ん『御慶』☆


新年早々縁起の良い噺を小満ん師匠の高座で聴かれるだけで満足。

御慶を演じるには少し短かったため、裃と刀を誂えに行く場面は省いていたが十分に楽しませていただいた。

鶴の千八百四十五の札が売れてしまったと知った時の八五郎の江戸っ子口調での言い立てには勢いがあったし、富くじが当たって立てなくなった八五郎の所作が何とも可笑しく味がある。

元旦の朝に裃を纏い年始の挨拶をする八五郎のワクワクする様子も小満ん師匠でしか味わえない八五郎の人柄が見えたように思う。

大家が八五郎に御慶を教える際に大家がつぶやく

長松の 親の名でくる 御慶かな

という句もこの噺に奥深さを与えていると感じた。

2019年、良き落語始めになった。